この記事でわかること
- 育休明けに、給与が下がっても社会保険料が高いままになる理由
- 保険料を下げる届出(育児休業等終了時報酬月額変更届)と、本人がやること
- 保険料がいくら・いつ下がるか、将来の年金を守る申出
※この記事は2026年10月時点の情報です。金額は目安です。
結論:育休から復帰した人は、届出で4か月目から保険料を下げられます
育休から復帰して時短勤務などで給与が下がっても、健康保険料・厚生年金保険料は、しばらく育休前と同じ金額が引かれることがあります。
育休から復帰した人は、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を出すと、復帰して4か月目の分から、下がった給与に合わせて保険料を下げられます。届出は会社が行いますが、本人の申し出が必要です。
あわせて「養育期間標準報酬月額特例申出書」を出すと、保険料が下がっても、将来の年金額は育休前の水準で計算されます。
なぜ育休明けの社会保険料は高いままなの?
健康保険料・厚生年金保険料は、毎月の給与そのものではなく、「標準報酬月額」という区切りのよい金額をもとに計算されます。標準報酬月額は、決まった時期や、給与が大きく変わったときに見直されます。
育休中は保険料が免除されますが、標準報酬月額は育休前のままです。そのため、復帰して時短で給与が下がっても、見直しが行われるまでは、育休前の給与をもとにした保険料が引かれます。
会社がふだん行う見直しは、給与が大きく下がった場合などに限られます。下がり方が小さい場合や、復帰した月の出勤日が少ない場合などは、すぐには見直されないことがあります。そこで使えるのが、育休から復帰した人のための届出です。
確認先:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」
育児休業等終了時報酬月額変更届とは
育休から復帰した人が、復帰後の給与に合わせて標準報酬月額を見直してもらうための届出です。正式名称は「健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使える人 | 育休が終わった日に、3歳未満の子どもを育てている人 |
| 見直しの基準 | 育休が終わった日の翌日がある月から3か月の給与の平均(出勤日が少ない月は除く) |
| 下がる条件 | 標準報酬月額が1等級以上変わること(1等級の差でもよい) |
| 下がる時期 | 復帰して4か月目の分の保険料から |
| 出す人 | 本人が申出者として記入し、会社が日本年金機構(健康保険組合に入っている場合は組合にも)へ提出 |
時短勤務の人だけでなく、フルタイムで復帰しても、残業がなくなるなどで給与が下がった人も使えます。
給与が下がっても、標準報酬月額の等級が変わらない程度であれば、届出をしても保険料は変わりません。
いくら下がる?
目安:標準報酬月額が30万円から24万円に下がると、本人負担の保険料は月約8,500円下がります(協会けんぽ・東京都・40歳未満の場合。健康保険料+子ども・子育て支援金+厚生年金保険料、2026年度の料率で計算)。
40〜64歳の人は介護保険料が加わるため、月約9,000円です。
※都道府県によって料率が違うため、金額は少し変わります。健康保険組合に加入している人も料率が異なります。実際の保険料は、加入先の保険料額表で確認してください。
やること
この届出は本人の申し出が前提です。会社が自動的に出してくれるとは限らないので、自分から申し出ましょう。
- 復職するとき、会社に申し出る
人事・給与の担当者に「育児休業等終了時報酬月額変更届を出したい」と伝えます。 - 届書の申出者欄に記入して、会社に渡す
会社から届書を渡されたら、本人が記入する欄(申出者の欄や、申し出る意思を確認するチェック欄)に記入し、会社に提出します。会社が日本年金機構へ届け出ます。 - 給与明細で確認する
保険料が下がったかを、給与明細の健康保険料・厚生年金保険料の欄で確認します(確認する月は次の見出しで説明します)。 - 下がっていなければ、会社に確認する
「育児休業等終了時報酬月額変更届は出してもらえましたか」と聞きましょう。
いつ下がる?給与明細で確認できる月
保険料が下がるのは、育休が終わった日の翌日がある月から数えて4か月目の分からです。
健康保険・厚生年金の保険料は、前月分を当月の給与から差し引く決まりです(翌月徴収)。そのため、給与明細で下がったことを確認できるのは、原則としてその翌月です。
| 例:4月に復職した場合 | |
|---|---|
| 見直しの基準になる給与 | 4月・5月・6月 |
| 下がる保険料 | 7月分から |
| 給与明細で確認できる月 | 原則として8月の給与 |
※明細で下がっていないときは、会社に確認しましょう。
あわせて出す:養育期間標準報酬月額特例申出書
保険料が下がると、そのままでは将来の厚生年金の額も少し下がります。これを防ぐのが「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」です。子どもが3歳になるまでの間、保険料は下がった額のまま、年金額は育休前の標準報酬月額で計算してもらえます。
この申出書は、本人が記入して会社に提出し、会社が日本年金機構へ届け出ます(退職した後は本人が直接出せます)。
やること
- 会社に申し出て、申出書を受け取る
月額変更届と一緒に「養育期間標準報酬月額特例申出書も出したい」と伝えます(様式は日本年金機構のサイトからもダウンロードできます)。 - 申出書に記入する
「養育特例開始年月日」には、育休が終わった日の翌日を書きます(子どもの生年月日を書く間違いが多いので注意)。 - 添付書類を用意する
- 戸籍謄本(抄本)または戸籍記載事項証明書(コピー不可):本人と子どもの関係を確認するため。会社が続柄を確認した場合や、本人と子どものマイナンバーを書いた場合は省略できることがあります(会社に確認)
- 住民票の写し:子どもと同居していることを確認するため。提出日前90日以内に発行され、かつ育休が終わった日の翌日がある月の初日以降に発行されたものが必要です。本人と子どものマイナンバーを書いた場合は省略できます
- 会社に提出する
提出は育休が終わった後です(育休中は出せません)。
さかのぼって認められるのは申出の前月までの2年間なので、出し忘れに後から気づいても間に合う場合があります。給与明細には変化が出ない手続きなので、出したかどうかを自分で覚えておきましょう。
確認先:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
あわせて確認:時短中にもらえる給付金
2歳未満の子どもを育てるために時短勤務をすると、雇用保険から「育児時短就業給付」が支給されます。
支給額は、時短中の賃金の最大10%です。子どもが2歳になるまで、毎月の賃金に応じて支給されます。
申請は原則として会社が行います。対象になる条件や、いくらもらえるかの計算例は次の記事で解説しています。
→ 時短で給与が下がっても、2歳未満の子なら給付がもらえる|育児時短就業給付の金額と期間
よくある質問
Q. フルタイムで復帰した場合も使えますか?
A. 使えます。時短勤務かどうかではなく、復帰後の給与が下がって標準報酬月額が1等級以上変わるかどうかで決まります。残業がなくなって給与が下がった場合も対象です。
Q. 給与があまり下がらなかった場合は?
A. 標準報酬月額の等級が変わらない程度であれば、届出をしても保険料は変わりません。
Q. 育休を取らずに、産休明けから復帰した場合は?
A. 産休明けの人には「産前産後休業終了時報酬月額変更届」という、同じような仕組みの届出があります。会社に確認してください。養育期間標準報酬月額特例申出書も同じように出せます。
Q. 届出を出し忘れていたことに後から気づいたら?
A. 育児休業等終了時報酬月額変更届は、すぐに出すことになっている届出ですが、届出が遅れても、保険料は4か月目の分にさかのぼって見直されます。見直しが始まる月は、申し出た日ではなく、育休が終わった日をもとに法律で決まっているためです(健康保険法第43条の2、厚生年金保険法第23条の2)。多く引かれていた保険料は会社を通じて調整されます(方法は会社に確認)。ただし、多く払った保険料を返してもらう権利は、2年たつと時効で消えてしまいます(健康保険法第193条、厚生年金保険法第92条)。気づいたら早めに会社に相談しましょう。養育期間標準報酬月額特例申出書は別の手続きで、申出の前月までの2年間さかのぼって認められます。
実務の現場から(筆者)
復帰してしばらくは、手取りが少なく感じるかもしれません
初めて育休から復帰した人は驚くことが多いのですが、時短で給与が下がっても、しばらくは育休前と同じ保険料が引かれます。給与は下がっているのに保険料はそのままなので、思ったより手取りが少なく感じるかもしれません。
育児休業等終了時報酬月額変更届は、自分から確認を
ぜひ覚えておいてほしいのが、育児休業等終了時報酬月額変更届です。届出をするのは会社ですが、本人の申し出があることが前提の手続きです。復職のときに会社から案内がなければ、自分から確認しましょう。
見直し後は、給与明細で確認しましょう
見直しの時期が来たら、給与明細の保険料の欄を確認してください。保険料が下がった分、手取りが増えているはずです。もし保険料が変わっていなければ、すぐに会社へ確認しましょう。
養育期間標準報酬月額特例申出書も忘れずに
もう一つ忘れてはいけないのが、養育期間標準報酬月額特例申出書です。給与明細に変化が出ない手続きなので、会社から案内されないことも少なくありません。将来の年金に関わる手続きとして、自分で意識しておきましょう。
まとめ
- 育休明けに給与が下がっても、標準報酬月額が育休前のままだと、保険料は高いまま引かれることがあります
- 「育児休業等終了時報酬月額変更届」を出すと、1等級の差でも、復帰して4か月目の分から保険料を下げられます。本人の申し出が必要です
- あわせて「養育期間標準報酬月額特例申出書」を出すと、将来の年金額は育休前の水準で計算されます
確認先(公的機関)
- 日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」
- 日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
- 協会けんぽ「令和8年度の都道府県毎の保険料率」
- e-Gov法令検索「健康保険法」(第43条の2、第193条)
- e-Gov法令検索「厚生年金保険法」(第23条の2、第92条)
- 勤務先の担当者/管轄の年金事務所/加入している健康保険組合
個別の状況によって扱いが変わることがあります。具体的な判断は、会社の担当者や年金事務所にご確認ください。