この記事でわかること
- 育児休業等終了時報酬月額変更届の要件と、随時改定との違い
- 書き方と提出の手順、給与計算への反映、届出が遅れたときの扱い
- あわせて案内する養育期間標準報酬月額特例申出書と、従業員に伝えておくこと
※この記事は2026年10月時点の情報です。様式や取扱いは変わることがあるため、提出前に日本年金機構(健康保険組合に加入している場合は組合)で確認してください。
育休から復帰する従業員本人向けの解説はこちら →「育休明け・時短で給与が下がったのに社会保険料が高い?保険料を下げる届出と手順」
この届出の役割
育休から復帰した従業員は、時短勤務などで給与が下がっても、標準報酬月額は育休前のままです。随時改定は、固定的賃金の変動があり、2等級以上の差が出るなどの要件を満たさないと行えません。
「育児休業等終了時報酬月額変更届」は、育休から復帰した従業員の標準報酬月額を、随時改定に当たらない場合でも、復帰後3か月の報酬をもとに4か月目から見直せる届出です。本人の申出があって初めて提出できる届出なので、担当者から案内することが大切です。
要件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 育児休業等の終了日に、3歳未満の子を養育している被保険者 |
| 等級の差 | 従前の標準報酬月額と、改定後の標準報酬月額に1等級以上の差があること |
| 支払基礎日数 | 育休終了日の翌日が属する月以後3か月のうち、少なくとも1か月は17日以上(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)。17日未満の月は平均から除く。パート(短時間就労者)は、3か月とも17日未満の場合、15日以上の月で平均する |
| 申出 | 本人の申出が必要(事業主を経由して申し出る) |
| 提出できない場合 | 育休終了日の翌日に、引き続いて産前産後休業を開始している場合 |
時短勤務かどうかは要件ではありません。フルタイムで復帰しても、残業がなくなるなどで報酬が下がり、1等級以上の差が出れば対象です。
確認先:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」
随時改定との違い
| 随時改定(月額変更届) | 育児休業等終了時報酬月額変更届 | |
|---|---|---|
| 対象 | すべての被保険者 | 育休等の終了日に3歳未満の子を養育している被保険者 |
| きっかけ | 固定的賃金の変動 | 本人の申出 |
| 等級の差 | 2等級以上 | 1等級以上 |
| 支払基礎日数 | 3か月とも17日以上 | 17日以上の月が1か月以上あればよい(17日未満の月は平均から除く)。パート(短時間就労者)は、3か月とも17日未満なら15日以上の月で平均 |
| 改定月 | 変動月(変動後の報酬を初めて支払った月)から4か月目 | 育休終了日の翌日が属する月から4か月目 |
| 届出 | 事業主の義務 | 本人が申出者として記入し、事業主が提出 |
時短で基本給が下がり、2等級以上下がる場合は、通常は随時改定の対象になります。一方、下がり方が1等級の場合や、復帰月の出勤日が少なく随時改定の要件を満たさない場合でも、育児休業等終了時報酬月額変更届なら4か月目から改定できます。
提出の手順と書き方の要点
手順
- 復職前に、従業員へ制度を案内する
(養育期間標準報酬月額特例申出書もあわせて) - 復職時に、本人から申出を受ける
- 復帰後3か月の報酬が確定したら、届書を作成する
- 本人に申出者欄を確認・記入してもらう
- 日本年金機構へ提出する
(健康保険組合に加入している場合は、組合への提出も必要) - 改定後の標準報酬月額を給与計算に反映する
書き方の要点
- 申出者欄:本人が申し出たことを確認する欄があります。本人に記入(チェック)してもらいます
- 育児休業等終了年月日と、養育する子の氏名・生年月日を記入します
- 3か月分の報酬と支払基礎日数:育休終了日の翌日が属する月から3か月分を、給与を支払った月ごとに記入します
- 平均額:支払基礎日数が17日以上の月だけで平均します(1円未満は切り捨て)
- 改定年月:3か月目の翌月(4か月目)を記入します
- 給与締切日・支払日(支払日が当月か翌月か)を記入する欄があります
- 育休終了日の翌日に産前産後休業を開始していないことを確認する欄があります
様式と記入例は日本年金機構のサイトにあります。健康保険組合に加入している場合は、組合独自の様式があることもあるので確認しましょう。
提出先・方法・時期
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所(健康保険組合に加入している場合は組合にも) |
| 方法 | 電子申請、郵送、窓口持参 |
| 時期 | 速やかに(具体的な期限日は定められていません) |
確認先:日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」
改定月と給与計算への反映
3か月は「支払った月」で数える
報酬は、給与の計算の対象になった月ではなく、実際に給与を支払った月で数えます。
締め日・支払日に注意:「月末締め・翌月払い」の会社では、復帰した月に支払う給与は育休中の月の分です。育休中の月がまるごと無給なら、その給与の支払基礎日数は0日になり、平均から除かれます。また、月の途中で復帰した場合は、翌月に支払う給与(復帰した月の分)も、休業した日数を差し引くと17日未満になり、除かれることがあります。復帰後3か月のうち、どの月が平均に入るかを確認してから届書を作りましょう。
給与から差し引く保険料が変わるのは、改定月の翌月
健康保険・厚生年金の保険料は、前月分を当月の給与から差し引く決まりです(翌月徴収)。改定月の保険料は、その翌月の給与から差し引きます。
| 例:4月に復職した場合 | |
|---|---|
| 平均の基準になる報酬 | 4月・5月・6月に支払った報酬 |
| 改定月 | 7月(7月分の保険料から) |
| 給与から差し引く保険料が変わる月 | 8月に支払う給与 |
改定後の標準報酬月額の適用期間
1〜6月に改定した場合はその年の8月まで、7〜12月に改定した場合は翌年の8月まで適用されます(その間に随時改定などがない場合)。
届出が遅れた場合
届出は速やかに行うものですが、遅れた場合でも、改定は4か月目にさかのぼって行われます。改定が始まる月は、届出日ではなく、育休終了日をもとに法律で決まっているためです(健康保険法第43条の2第2項、厚生年金保険法第23条の2第2項)。
さかのぼって改定されると、多く差し引いていた保険料の差額を精算する必要があります。ただし、保険料の還付を受ける権利は、行使できる時から2年で時効により消滅します(健康保険法第193条第1項、厚生年金保険法第92条第1項)。出し忘れに気づいたら、早めに提出しましょう。
確認先:e-Gov法令検索「健康保険法」/e-Gov法令検索「厚生年金保険法」
あわせて案内する:養育期間標準報酬月額特例申出書
標準報酬月額が下がると、将来の厚生年金の額にも影響します。3歳未満の子を養育する被保険者が申し出ると、保険料は下がった標準報酬月額のまま、年金額は従前の標準報酬月額(子の養育を始めた月の前月の額)で計算されます。
- 本人が記入した申出書を、事業主が日本年金機構へ提出します(退職後は本人が直接提出できます)
- 提出は育休が終了した後(育休中の保険料免除期間中は対象外)
- 「養育特例開始年月日」は、育休から復帰した場合は育休終了日の翌日(子の生年月日ではない)
- 申出日より前の期間は、申出日の前月までの2年間について認められます
- 添付書類:戸籍謄本(抄本)または戸籍記載事項証明書、住民票の写し。事業主が続柄を確認した場合や、申出書に本人と子の個人番号を記載した場合は省略できることがあります
給与明細に変化が出ない手続きなので、提出したかどうかを社内で記録しておくことが大切です。
確認先:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
従業員に伝えておくこと
- 届出は本人の申出が前提であること
- 保険料が下がるのは4か月目の分から、給与から差し引く額が変わるのはその翌月の給与からであること
- 標準報酬月額が下がると、出産手当金・傷病手当金の額も下がること(支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均をもとに計算されるため)。養育期間標準報酬月額特例は年金額の計算だけに使われ、健康保険の給付には使われません
- 将来の年金額を守るため、養育期間標準報酬月額特例申出書もあわせて出せること
よくあるミスとチェックリスト
よくあるミス
- 本人に案内せず、申出の機会を逃す
- 随時改定に当たらないことだけを確認して、何も手続きをしない
- 3か月の報酬を「給与の計算の対象月」で拾ってしまう(支払った月で数えていない)
- 支払基礎日数が17日未満の月を平均に入れてしまう
- 改定後の標準報酬月額を、給与計算に反映し忘れる
- 健康保険組合への提出を忘れる
- 養育期間標準報酬月額特例申出書の案内・提出が漏れる
担当者チェックリスト
復職前
- 子の生年月日、育休終了日を確認した
- 本人に、月額変更届と養育期間標準報酬月額特例申出書を案内した
届書の作成・提出
- 本人から申出を受けた
- 育休終了日の翌日が属する月から3か月分の報酬を、支払った月ごとに拾った
- 支払基礎日数17日未満の月を除いて平均した(パートで3か月とも17日未満の場合は、15日以上の月で平均した)
- 従前と改定後で1等級以上の差があることを確認した
- 育休終了日の翌日に産前産後休業を開始していないことを確認した
- 本人に申出者欄を記入してもらった
- 日本年金機構(健康保険組合に加入している場合は組合にも)へ提出した
提出後
- 改定後の標準報酬月額を給与計算に反映した(改定月の翌月の給与から)
- 改定の決定通知を受け取り、本人に通知した
- 届出が遅れた場合、差額を精算した
- 養育期間標準報酬月額特例申出書を提出し、提出したことを記録した
実務の現場から(筆者)
届出までの間に、忘れない工夫を
この届出は、復帰後3か月分の給与を支払ってから作るため、育休明けから実際に届け出るまでに時間がかかります。その間に忘れてしまわないよう、復職時に提出予定の月をメモしておくなど、管理の工夫をしておきましょう。
養育期間標準報酬月額特例申出書も案内を
養育期間標準報酬月額特例申出書は、知らない従業員も多い手続きです。従業員の将来の年金を守るためにも、月額変更届とあわせて案内しましょう。
3か月の数え始めは「育休から復職した月」
3か月の数え始めは、復帰後に最初の給与を支払った月ではなく、育休から復職した月です。その月から3か月の間に支払った給与で平均します。数え始めと給与の支払月が混ざりやすいので気をつけましょう。
まとめ
- 育児休業等終了時報酬月額変更届は、随時改定に当たらなくても、1等級以上の差があれば4か月目から標準報酬月額を見直せる届出です。本人の申出が前提です
- 3か月の報酬は支払った月で数え、支払基礎日数17日未満の月は除きます。給与から差し引く保険料が変わるのは改定月の翌月です
- 届出が遅れても4か月目にさかのぼって改定されますが、保険料の還付は2年で時効です。養育期間標準報酬月額特例申出書もあわせて案内しましょう
確認先(公的機関)
- 日本年金機構「育児休業等終了時報酬月額変更届の提出」
- 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」
- 日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
- 協会けんぽ「出産で会社を休んだとき(出産手当金)」
- e-Gov法令検索「健康保険法」(第43条の2、第193条)/e-Gov法令検索「厚生年金保険法」(第23条の2、第92条)
- 管轄の年金事務所/加入している健康保険組合
個別の事案の判断は、管轄の年金事務所、または社会保険労務士にご確認ください。